NJKF×CHALLENGER 9 ( KING of CHALLENGER ) 見どころ

■第7試合
Antonio Orden (El Origen Thaimartin/Orden Team) VS 大田拓真 (新興ムエタイジム)

WBCムエタイ世界フェザー級タイトルマッチ 3分5R

 NJKFが世界に誇る、エース大田拓真の世界戦が決定した。大田は近年、23年5月にメキシコへ飛び「IRON FIST」で同団体認定のムエタイ王座を2R TKOで獲得、同年7月には新日本キックで王者・瀬戸口勝也を破り、続いて9月からONE FFに出場を開始。時に線の細さを感じさせるテクニシャンの印象もあったが、オープンフィンガーグローブを用いるONEムエタイで荒々しさを伴う激闘派に変貌。2連勝の後、3戦目こそ1-2の僅差判定で落とすも再起して勝利し、現在ONEでの戦績を3勝1敗としている。
 デビューから期待を受けながらNJKF王座には恵まれなかった大田だが、24年2月の王座決定戦で笹木一磨を大差判定で退け、遂にNJKFフェザー級王者に。同王座は1年後にTAKAYUKIを4R TKOで降して防衛を果たし、王者の責務も果たした上で満を持しての世界王座挑戦となる。
 今回挑むオルデンはスペイン出身で実に7つの王座を持つ“ベルトコレクター”。リーチのあるサウスポーで、ムエタイ世界王者らしくパンチ・蹴り・ヒジ・ヒザの攻撃を使いこなし、23年のONE FFではバックヒジでダウンを奪い勝利を上げている。相手がオーソドックス、ケンカ四つでの対戦では左のミドルと前蹴りを主軸にリズムを作り、この蹴りで作った距離から踏み込んで放つストレートは伸びがあり、フックやアッパーにも当て勘を持つ。
 あらゆる攻撃を備えるオルデンだが、一方で首相撲では攻撃が少なくブレイク待ちとなったり、近距離での攻防をストレスとする場面も見られる。同じくオールラウンダーの大田だが組みの強さに定評を持ち、23年11月にはタフなルークワンをローでKOにも沈めており、近い間合いでの攻防は優位が予想される。
 自身が得意とする間合いの戦いにどちらが持ち込むことができるか。世界戦らしい駆け引もぶつかる総力戦となりそうだ。

■第6試合
嵐 ( KING gym ) VS 星 拓海 ( IDEAL GYM )

WBCムエタイ日本統一バンタム級王座決定戦 3分5R

「K-1最高じゃねぇよ、NJKF最高だろ。ボコボコにしてやるからな」
 WBCムエタイ日本統一バンタム級王座決定トーナメントが発表された2月、K-1から乗り込んだ山脇飛翼に嵐は噛みつき対戦を決めた。
 戦前から相手に食って掛かり、リングでケンカを繰り広げるのが嵐の流儀だが、昨年2月にNJKF王者となって以降は振るってこなかった。王者第1戦で迎えた当時のスックワンキントーン王者・桂英慈戦でドロー(4月)、初参戦のONEではKO負け(8月)、ヒジあり55kg最強決定トーナメントで壱・センチャイジムに判定負け(11月)と、好調な出足から一転、24年は嵐にとって苦難の1年となった。
 だが嵐は自身のあり方を曲げずに25年の戦いに臨み、2Rにダウンを奪って山脇を撃破。最終3R、カーフの猛追を受けたがダウンは喫さず何とかしのぎ、判定勝利で決勝に駒を進めた。崖っぷちで踏み止まった形だ。
 対して上り調子、評価を高めて臨むのがスックワンキントーン王者の星。極真空手からRISEライト級の1位となり活躍した渡辺理想代表の指導で腕を磨き、嵐とドローを演じた桂を24年11月に破ってスックワンキントーンのベルトを奪取。その距離感とセンスは関係者に評価されていたが、トーナメント1回戦でもタフなJINを倒せなかったものの完勝と言える内容で降してみせた。
「試合には勝ったけど勝負には勝ってない」と1回戦突破も課題を残した嵐に、さらなる難敵が立ちふさがる。だが、強者を降し得たベルトにこそ、真の価値があるというもの。昨年のブレーキを巻き返す勝利とベルト奪取はなるか。

■第5試合
吉田 凜汰朗 ( VERTEX ) VS 健太 ( E.S.G )

NJKFスーパーライト級 特別ルール オープンフィンガーマッチ 3分3R(EX1,2)

 因縁渦巻く両者の第3戦にして決着戦が実現する。
 吉田と健太は23年4月に初対決。当時すでに100戦を超えていた健太は技術と経験の差を見せ、危なげなく吉田を退けた。健太に敗れ3連敗となり窮地に陥った吉田だが、この敗戦を機に生まれ変わる。格闘技界随一のキャリアを誇る健太の技術と精神を直に浴びたことで取り組みの甘さを痛感。「自分の気持ちを常にMAX」「自分に勝つ」ことを意識して練習に臨むと覚醒し、同年9月に健太の同門・畠山隼人を破りNJKFスーパーライト級王座奪取に結びつけた。
 2018年にNJKF新人王を獲得しながら、どこかくすぶっている印象のあった吉田だが、ここから好試合を連発するようになり、23年の畠山戦に続き、24年の基山幹太戦もNJKF年間最高試合に選ばれた。
 そんな中で迎えた両者の第2戦は今年2月、吉田が持つNJKF王座の防衛戦として行われた。右フックで吉田に左まぶたから出血を呼んだ健太は、3R終了時の採点で3者30-29とリード。追い上げる吉田だが、健太はヘッドワークでかわしながらパンチを当て終了。リードを守ったかに思われたが、ジャッジは1人が49-49でドローも、2者は49-48で吉田を支持。辛くもベルトを守るのに成功した。
 判定に納得のいかない健太は不満を表明するだけでなく抗議文を提出。だが結果は覆ることなく、一時はNJKF離脱も宣言した。しかし再々戦のオファーがあると、これを受諾。ファイターらしく自身の勝利を試合で証明すべくリングに戻ってくる。
 そして両者の第3戦はNJKF初となるオープンフィンガーマッチに。通常より薄く殺傷力の増すグローブをつけての決闘、まさに決着戦にふさわしい形式となる。
 健太は昨年、カンボジアへ飛びバンテージに縄を巻いて戦う、オープンフィンガーマッチを上回る危険な戦いを経験。何ら臆することははないだろう。一方、吉田は変化をつけた多彩なジャブを得意としており、このルールではよりそれが活きる可能性がある。
 オープンフィンガーグローブに潜む魔物は2人の対決に初のKOをもたらすか。

■第4試合
繁那 ( R.S-GYM ) VS 藤井 昴 ( KING gym )

NJKFスーパーバンタム級王座決定戦 3分5R

 4月大会で幕開けしたNJKFスーパーバンタム級王座決定トーナメント。繁那と藤井、昨年11月の対戦でドローに終わった2人のリマッチによる決勝となったが、1回戦は対照的な勝ち上がりとなった。
 当初自身が望む大田一航との対戦が組まれた繁那だが、一航が3月のONE Friday Fightsで左母指中手骨骨折となり欠場。代打出場となった祖根亮麻と対戦する。
 開始から距離を詰めて出た繁那は、サウスポーからパンチを連打し繋いだヒザを祖根のボディにグサリ。これで祖根を悶絶KOに降し1Rフィニッシュの快勝を見せた。
 一方の藤井は京都野口ジムの中島凛太郎と1回戦。ヒザを得意とする中島にまだ戦績の浅い藤井がいかに対応するかが見ものであったが、サウスポーの藤井に中島の蹴りが連続でローブローとなってしまい試合続行不可能に。試合は1Rで不成立となったためノーコンテストとなったが、トーナメントのためここまでの攻防でマスト判定を取り、2者の支持を得た藤井が決勝へ進むこととなった。
 昨年11月の対戦では、ONEで初回KOを上げるなど実力を示していた繁那にまだ4戦目の藤井が挑む無謀なマッチメイクと思われたが、互いにダウンを取り合いドロー。王座決定戦というこれ以上ないシチュエーションで再戦にして決着戦となる。
「NJKFを世界へ連れて行きます」と1回戦勝利後に語った繁那だが、この一戦の勝者がこの言葉を担うこととなる。

■第3試合
西田 光汰 ( 西田キックボクシングジム ) VS 明夢 ( 新興ムエタイ )

NJKF52kg契約 3分3R(EX1)

 デビューから4戦4勝と無敗で進んだ西田だが、23年6月にタイトルマッチ経験者である谷津晴之と対戦するとダウンを奪われ3-0の判定負け(ジャッジ3者とも30-26)。西田にとって挫折の初黒星となり、次戦も敗れたため、その後が危ぶまれた。しかし西田はそこから3連勝とキャリアを立て直し、谷津との再戦を王座決定戦という勝てばリベンジとベルトの2つが手に入る最高のシチュエーションで実現する。

 強豪野球部に所属し時に12~14時間という長時間の練習に心身を鍛えられた西田は、ここでその持ち味を発揮。延長6Rに及んだ戦いで谷津を振り切り、父が代表を務める西田キックボクシングジムに初となるベルトをもたらした(※公式記録はドロー)。

 西田は続く今年の2月大会で同級のS-1世界チャンピオン優心と王者対決。2R終了時の採点で19-20、19-20、18-20と3者が優心を支持したが、出力と集中力を落とさない西田は最終3R、カウンターのストレートでダウンを奪取。逆転勝利で“NJKFフライ級最強”の称号をものにした。

 当初今大会では「クソ地味」と西田をこき下ろした永井雷智を相手にタイトル防衛戦が組まれたが、永井が怪我により欠場。防衛戦こそ一旦延期となったが、明夢を相手に王者の威信が問われる一戦となった。

 明夢はデビューから2戦2KOで進んだ永井の第3戦で対戦(24年2月)。先制ダウンを奪われたが、再三叩き込んだローを永井に効かせ、盛り返してドローに持ち込んだ。いわば永井にプロの洗礼を浴びせた選手でもある。

 永井の欠場で肩すかしとなった西田だが、ノンタイトル戦といえど王者の強さを示さなければならないのは変わらない。試合を通じ永井にメッセージを伝えるか。

■第2試合
山脇 飛翼 ( K-1ジム心斎橋チームレパード ) VS サンチャイ・TEPPENGYM ( TEAM TEPPEN )

WBCムエタイ日本バンタム級 3分3R(EX1)

 今大会で嵐と星拓海が争うWBCムエタイ日本統一バンタム級王座決定戦。そのトーナメント1回戦で山脇飛翼は敗れはしたが大いに存在感を発揮した。
 K-1甲子園王者からプロとなった山脇はK-1ルールで戦績を重ねたが、ムエタイルールにも進出すると、こちらでも才能を開花。24年には4戦をムエタイルールで行っていずれも勝利し、中でも元NJKFバンタム級王者・志賀将大をヒジでカットしTKOした勝利は特筆される。
 2月の王座決定トーナメント発表時、山脇が「僕が勝ちます」「K-1最高」と話すと、これに嵐が「K-1最高じゃないんだよ、NJKF最高だよ。4月、こいつぶっ飛ばします」と噛みつき対戦が決定。
 試合は嵐がストレートで2Rにダウンを奪うも、山脇はここから真価を発揮。カーフキックで再三再四嵐を襲うと、嵐はカーフを避けるためサウスポーにスイッチ。最終3Rはカーフで追う山脇を嵐がクリンチも駆使してしのぐ展開となりタイムアップ。ダウンのリードを守った嵐が判定3-0で勝利したが、自身の苦戦を認め、WBCムエタイ日本統一王者となった後での再戦を約束した。
 サンチャイはTEPPEN GYMでトレーナーを務める、元ラジャダムナンスタジアム認定ミニフライ級王者。5月30日で37歳となるが、近年も大﨑一貴、大崎孔稀、石井一成、白幡裕星と日本軽量級のトップ選手と対戦しており、23年11月にはオープンフィンガーグローブマッチでKNOCK OUT-REDバンタム級王者・乙津陸を3-0の判定で降している。RISEのHPに綴られた戦績は実に222勝(89KO)68敗3分。“百戦錬磨”を地で行く男だ。
 4月の戦いで実力を見せ連続参戦を勝ち取った山脇だが、曲者強豪のサンチャイを乗り越え、さらにNJKFでの戦いを切り開くことができるか。

■第1試合
王 清志 ( 新興ムエタイ ) VS 中島 大翔 ( GETOVER )

NJKFスーパーバンタム級 ランキング戦 3分3R(EX1)

 今大会で新たなNJKF王者が生まれるスーパーバンタム級から本戦はスタート。互いに強い思いとドラマを秘めた2人の対戦となる。
 王は2016年にプロデビューしランキング入りするなど戦績を重ねるも、ベルトには届かず戦線を離脱。かつては「清志」のリングネームで戦ったが、今年4月に王清志として約4年ぶりにリングへ戻ってきた。
「一区切りつけた」と思っていた王だが、「純粋に観戦したり応援しきれない」自分に気がつき、「好きな格闘技を純粋に楽しむために」復帰を決意。だがそんな思いで臨んだ山川敏弘戦は3R KO負け。ならなかった復帰白星を得るため、今回連続での参戦となる。
 対して中島は新たにNJKFへ加わった名古屋GETOVERの所属選手。第18代全日本バンタム級と第2代NJKFフェザー級の2階級王者である中島稔倫会長の息子であり、小学校1年から仙台、石巻、沖縄、タイと国内外で遠征試合を行い、技術と精神を学んできた。
 23年には高校を卒業し、この年の10月、レジェンド藤原あらしと対戦しドロー。昨年2月、今大会の第2試合に登場する山脇飛翼とNJKF westで対戦すると、0-2での僅差判定負けとなり、今回は1年4ヵ月ぶりの試合となる。
 NJKFフライ級王者・西田光汰の父である西田会長は中島会長の後輩にあたり、奇しくも今大会では息子2人の後楽園共演が実現することに。
 王が復活の勝利を手にするか、中島が父にNJKF加盟後の初白星を贈るのか。