NJKF×CHALLENGER 7 見どころ

■第9試合
大田拓真 (新興ムエタイジム) VS TAKAYUKI (K-CRONY)

 24年も大田拓真は国内外の強豪を相手に戦いを繰り広げた。
 まず2月に“素手で闘う空手”を標榜する理心塾の笹木一磨に差を見せ判定勝ち。これまでなかったことが不思議なNJKF王座を遂に獲得し、戦いを幕開けした。
 続いて4月はONEに飛び、激闘の末に右ヒジでKO勝利を上げ35万バーツ(約150万円)のファイトボーナスを取得。6月もタフなクンクメール戦士を退け、NJKFの牙城を守った。
 このまま連勝を継続するかと思われたが、8月のONEで判定1-2の惜敗、しかし11月に再びONEで連戦に臨むと、中国の強打者ウェイ・ズーチンをテクニックで上回り判定勝ちで復活。ONEでの戦績を3勝1敗とした。
 25年第1戦は1年前に獲得したNJKF王座の防衛戦。昨年は5試合中3試合がONE、対戦相手も外国選手が4人となっており、すでに世界レベルでの活躍を見せている大田だが、今回は王者の責務を果たすための戦いとなる。
 対するTAKAYUKIは元NJKFスーパーバンタム級王者で、長いリーチを武器に2階級制覇を目指し大田に挑む。
 昨年10月、敵地・大阪で挑戦者決定戦に臨んだTAKAYUKIは2年負けなしであった坂本直樹(NJKF道場373)を振り切り判定勝ち。パンチを中心にミドル、前蹴りで大田を懐に入れない戦いが貫けるかが鍵となる。
 激闘派に変貌し、海外勢を真っ向勝負の果てに退けている大田。王者の強さと風格を見せるか。TAKAYUKIが勝てば25年年明けからNJKFを波乱が襲う。

■第8試合
吉田凜汰朗 (VERTEX) VS 健太 (E.S.G)

 赤コーナーで王者として迎え撃つ吉田と青コーナーから挑む健太、両者は2年前の4月、コーナーを逆にして対戦。キャリアと技量差を見せ健太が判定勝利した。
 この敗北で3連敗となった吉田だが、長くトップで走る健太との対戦で精神面はもちろん、「盗めたものも多くありました」と技術面での収穫も振り返る。
 敗戦を一過性のものではなく自らの糧とし、同年9月のタイトルマッチでチャレンジャーに抜擢を受けるとダウンを跳ね返して逆転勝利。ジム初の王者となった一戦は23年のNJKF最高試合にも選ばれた。
 この勝利で吉田はそれまでの殻を打ち破り、1段階も2段階も上の選手へと変身。24年に入ると1階級上のWBCムエタイ日本ウェルター級王者・青木洋輔に判定勝利し、シュートボクシングとの対抗戦ではダウンを奪って基山幹太を退け、好勝負を連発した。
 9月、3年ぶりに復帰した宮越慶二郎戦では敗れるも、これも2年連続の年間最高試合と思われる熱闘を見せた。これも全て、振り返れば自身を変えるきっかけとなった健太戦から始まっている。
 健太はここまで121戦68勝(21KO)46戦7分という驚異の戦績を持つ鉄人ファイター。“無事これ名馬”と現在もコンスタントに試合を行い、昨年もカンボジアに遠征してクンクメールと対戦し、スック・ワンキントーンで王者になるなど精力的に戦い続けている。
 吉田にとって2年の歩みが何であり、真に生まれ変われたかが問われる一戦。あるいは健太がその目論みを水泡に帰させ、NJKF3階級制覇を実現させるのか。

■第7試合
☆SAHO☆ (闘神塾) VS ダンコンファー・キヤペットノーイジム (キヤペットノーイジム)

 SAHOがK-1王者となりNJKFに戻ってくる。
 真っ赤なコスチュームが印象的なSAHOはNJKFで戦っていた当時からパンチを高速回転させる攻撃的なスタイルを展開。コロナ禍に行われたS1レディース バンタム級ジャパントーナメントでも力の差を見せる勝ち上がりで、20年11月の決勝では女子の試合としてNJKF初となるメインを託された。
 パンチ・ヒジ・ヒザとノンストップで攻めトーナメントを制したSAHOは、コロナ禍に阻まれながらも2年後の22年11月、S1女子世界バンタム級王座決定戦に進出。WPMF女子世界同級王者のロックナム・コーコムクラムを迎えたSAHOは得意のパンチ連打から蹴りを繋ぎ、ロックナムが組んできてもヒザ蹴りで応戦。3-0の判定で退け、悲願の世界王座奪取を成し遂げた。
 並行してK-1にも上がっていたSAHOはこの試合を最後にK-1に専念。22年6月、ジェシンタ・オースティン戦こそ打ち合いの末に敗れたが、その後は連勝を重ね、遂にK-1女子フライ級でも頂点を極めた(24年3月)。
 K-1でも持ち味とするアグレッシブファイトは一向に変わらず、ファンと関係者の度肝を抜いてきた。NJKF時代はそこに加えヒジ・ヒザも回転させており、今回は一層パワーと攻撃性を増した姿が見られるかもしれない。
 そんなSAHOに相対するは23歳、51戦38勝13敗のムエタイ戦士ダンコンファー・キヤペットノーイジム。凱旋あるいは戴冠第1戦の王者に、タイ人選手が苦い思いをさせる試合はこれまでNJKFの歴史で多く見られてきた。K-1にはない首相撲、あるいはムエタイ

■第6試合
匡志YAMATO (大和ジム) VS 雄也 (MY GYM)

 昨年5月、地元・名古屋のHOOST CUPにおける戦いで匡志YAMATOは2年半におよぶ長いトンネルをようやく抜けた。
 先代の守永光義会長から譲り受け、匡志は現在、所属する大和ジムの会長を務め、プレイングマネージャーとして活躍している。
 しかし、両立はやはり容易なことではなく21年12月を最後に白星から見放され、古傷の悪化で松葉杖生活にも見舞われた。だが、諦めず戦い続けた匡志は遂に昨年5月、聖域(サンクチュアリ)元統一ウェルター級王者・佐藤界聖に判定勝利。
 長く勝利を上げられず、会長業と両立する困難もあったため、匡志の目には涙があった。
 今回も得意のローと、大和哲也とともに師事するボクシングトレーナーに学んだ技術で勝利を目指す。
 対するは年末にBigbangフェザー級王者となった宮﨑勇樹率いるMYGYM エムワイジムの雄也。かつては新興ムエタイジムで戦っていたが仕事の都合でジムを移籍した戦うエアコン屋であり、初のヒジあり戦、3冠王の匡志が相手であっても臆することなく今回の戦いを受諾した。
 ともに熱い気持ちを持つ両者の一戦。心技体とよく言われるが、心に牽引され熱戦の予感がする。

■第5試合
優心 (京都野口ジム) VS 西田光汰 (西田キックボクシングジム)

 NJKFフライ級が激化している。
 京都野口GYM・野口会長の息子である優心は4歳からムエタイを開始。若くしてNJKFフライ級王者となると、谷津晴之の挑戦をからくも振り切り(22年9月、ドロー)王座を守った。そして23年12月、マッファン・ゲッソンリット(タイ)を迎えてS-1世界フライ級王座決定戦に臨むと、チェアマン判定の大接戦ながら世界のベルトをものにした。
 NJKFフライ級王者・西田光汰も同じく父が会長を務める西田キックボクシングジムの所属。昨年9月、NJKFフライ級王座決定戦に進んだ西田は谷津晴之との熱戦を展開。本戦では決着がつかず延長戦に突入したが、勝利への執念を実らせ王者となった。西田は23年6月の対戦でダウンを奪われ谷津に敗戦。王座決定戦では合わせてそのリベンジも叶え、二重で価値ある白星となった。
 世界王者vs日本王者、だが勝敗は格の通りとはならないのが格闘技の世界。勝つのはどちらか。そして2人と互角の戦いを繰り広げONEで3連勝を飾っている谷津、第5試合でも若き2人によるランキング戦が組まれており、フライ級から目が離せない。

■第4試合
高木雅己 (誠至会) VS 永井雷智 (VALLELY)

 タレントが充実してきたNJKFフライ級。第6試合にはS-1世界王者・優心とNJKF王者・西田光汰によるチャンピオン対決が組まれたが、NJKFランキング2位の髙木と3位の永井、次期挑戦者決定戦というべき戦いが行われる(現在1位は空位)。
 髙木は12戦7勝(5KO)5敗の23歳。圧巻は昨年6月「NJKF 2024 west 3rd」での日韓国際交流戦。ここでメインイベントⅢ、大会のトリに登場した髙木はユン・サンジンをわずか1R0分29秒でTKO。見事な形で大会を締めくくり、最短KOで大会MVPにも選出された。
「リングの中では人の生き様が出ると思っている」とSNSに綴る髙木は、まさにキック人生を賭け今回の一戦に臨む。
 対して永井は1月14日に歳を重ねたばかりの17歳。23年9月に15歳でデビューするとハイスピードの戦いを見せ、早いペースで試合も重ね現在6戦5勝(4KO)1分。若さはもちろん、鮮やかな倒しぶりも相まって大きな期待を寄せられている。
 永井自身も「ベルトを獲らなきゃ始まらない感じなので、とりあえずパッとベルトは獲りたい」とすでにロックオン。近々のタイトル挑戦を視野に入れる。
 東西のホープ対決、王者・西田が待つタイトルマッチに歩を進めるのはどちらとなる